米国の景気拡大はいつまで続くか、リスクは?=インベスコ グローバル・マクロ・セミナー(1)
インベスコ・アセット・マネジメント株式会社(以下、同社)は10月19日に、「インベスコ グローバル・マクロ・セミナー 〜米国中間選挙後の世界経済の行方と2019年の金融市場展望〜」と題するセミナーを開催した。まず、同社エコノミストとストラテジストが講演し、同社チーフ・エコノミストのジョン・グリーンウッド氏は「米国の景気拡大は今後2−3年間は継続する」と予測した。続く同社のチーフ・グローバル・マーケット・ストラテジストのクリスティーナ・フーパー氏は、「地政学リスクが今後の金融市場に混乱をもたらす」と指摘した。
グリーンウッド氏は、「世界経済の現状と今後の展望 2019年−2020年にかけての米国の景気サイクル見通し」と題して、米国景気の見通しを説明し、「今後2−3年間は景気拡大が続く見込み」とし、「2019年6月に、1991年3月から2001年3月までの過去最長の拡張期に並び、さらに長くなる」と予測した。
グリーンウッド氏はその理由として、まずバランスシートの健全性を挙げた。具体的には、米国の民間部門の債務の対GDP比率が2018年第2四半期時点で226%と、前回のピークである2009年第1四半期の296%を下回って2001年の水準まで低下しており、「民間部門のバランスシートは健全である」との見方を示した。続いて、インフレについて分析し、労働市場がひっ迫する中でも賃金の上昇が抑えられているほか、インフレを左右するマネーサプライ(M2)とクレジット伸びが現在低水準で安定しているとして、「足元のインフレは景気拡大の脅威とはならない」とした。
3点目として、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げは「正常化」であって「引き締め」ではないとした上で、FRBが慎重に利上げすると発言している点や、マネーサプライを縮小させないでFRBのバランスシートを縮小させることが可能であるとの点などから、「極端な金融引き締めの可能性は低く、金融正常化後は利上げを行わない」との見方を示した。4点目として米国債利回りの逆イールドカーブについて触れ、10年国債と3カ月短期証券の利回り格差から、過去に逆イールドカーブとなりながらも米国景気が低迷しなかった時期があるとして、「逆イールドカーブが常に景気後退を意味するものではない」とした。
最後に、足元の貿易戦争を取り上げ、「米国に景気後退をもたらすことは考えにくい」と指摘。例として、米国が1930年に輸入品に対する関税を引き上げた「スムート・ホーリー法」に言及し、1930年代の世界大恐慌の真の要因は同法ではなく、マネーサプライの収縮であるとの見方を示した。
続いてフーパー氏が、「今後の金融市場の方向性とリスク要因 地政学リスクがもたらす混乱」と題して講演し、「現在のマーケットには複数の不安定要因があり、株式市場、特に米国株式は大幅に調整する可能性もある」との見方を示した。
フーパー氏はまず、リスク要因として「富の偏在が拡大」している点を挙げた。「2008年の金融危機以降、日米欧の中央銀行は資産購入を拡大させ、結果として株式市場や住宅価格が大幅に上昇する一方で、投資家の行動バイアスは金融危機以降よりリスク回避的な行動が目立つようになった。結果的にリスクを取った一部の者に富の集中が進んだ」との見方を示した。加えて、「技術革新が失業率の増大などの経済不安定をもたらし、富の偏在の拡大につながる可能性を考慮する必要がある」と指摘した。
また、富の偏在などを背景として、「ポピュリズムの増大傾向により、地政学的リスクが拡大している」とし、米国については、「トランプ政権も保護主義的政策を掲げ、対中貿易赤字を主要問題としている。関税引き上げなどの貿易政策が経済成長を抑え、インフレを高める可能性がある」との見方を示した。
続いて、11月6日に行われる米国の中間選挙を取り上げ、「下院は民主党が過半数を取り返し、上院は共和党が過半数を維持する」との見通しをメインシナリオとして提示。結果、「下院でトランプ政権の疑惑に対する調査が始まり、民主党が関心を示すインフラ支出以外の政策実施が遅れる可能性がある」との見方を示した。
これらの見方を踏まえ、フーパー氏は米国株式が短期的に調整する可能性を指摘すると同時に、日本、欧州、新興国などで選別的な投資機会を探るべきとした。アクティブ運用の重要性にも言及し、「株価下落時にディフェンシブなポートフォリオで守りを固めつつも割安な銘柄に投資できる好機となり得る」との見方を示した。(2)へつづく
提供:モーニングスター社
グリーンウッド氏は、「世界経済の現状と今後の展望 2019年−2020年にかけての米国の景気サイクル見通し」と題して、米国景気の見通しを説明し、「今後2−3年間は景気拡大が続く見込み」とし、「2019年6月に、1991年3月から2001年3月までの過去最長の拡張期に並び、さらに長くなる」と予測した。
グリーンウッド氏はその理由として、まずバランスシートの健全性を挙げた。具体的には、米国の民間部門の債務の対GDP比率が2018年第2四半期時点で226%と、前回のピークである2009年第1四半期の296%を下回って2001年の水準まで低下しており、「民間部門のバランスシートは健全である」との見方を示した。続いて、インフレについて分析し、労働市場がひっ迫する中でも賃金の上昇が抑えられているほか、インフレを左右するマネーサプライ(M2)とクレジット伸びが現在低水準で安定しているとして、「足元のインフレは景気拡大の脅威とはならない」とした。
3点目として、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げは「正常化」であって「引き締め」ではないとした上で、FRBが慎重に利上げすると発言している点や、マネーサプライを縮小させないでFRBのバランスシートを縮小させることが可能であるとの点などから、「極端な金融引き締めの可能性は低く、金融正常化後は利上げを行わない」との見方を示した。4点目として米国債利回りの逆イールドカーブについて触れ、10年国債と3カ月短期証券の利回り格差から、過去に逆イールドカーブとなりながらも米国景気が低迷しなかった時期があるとして、「逆イールドカーブが常に景気後退を意味するものではない」とした。
最後に、足元の貿易戦争を取り上げ、「米国に景気後退をもたらすことは考えにくい」と指摘。例として、米国が1930年に輸入品に対する関税を引き上げた「スムート・ホーリー法」に言及し、1930年代の世界大恐慌の真の要因は同法ではなく、マネーサプライの収縮であるとの見方を示した。
続いてフーパー氏が、「今後の金融市場の方向性とリスク要因 地政学リスクがもたらす混乱」と題して講演し、「現在のマーケットには複数の不安定要因があり、株式市場、特に米国株式は大幅に調整する可能性もある」との見方を示した。
フーパー氏はまず、リスク要因として「富の偏在が拡大」している点を挙げた。「2008年の金融危機以降、日米欧の中央銀行は資産購入を拡大させ、結果として株式市場や住宅価格が大幅に上昇する一方で、投資家の行動バイアスは金融危機以降よりリスク回避的な行動が目立つようになった。結果的にリスクを取った一部の者に富の集中が進んだ」との見方を示した。加えて、「技術革新が失業率の増大などの経済不安定をもたらし、富の偏在の拡大につながる可能性を考慮する必要がある」と指摘した。
また、富の偏在などを背景として、「ポピュリズムの増大傾向により、地政学的リスクが拡大している」とし、米国については、「トランプ政権も保護主義的政策を掲げ、対中貿易赤字を主要問題としている。関税引き上げなどの貿易政策が経済成長を抑え、インフレを高める可能性がある」との見方を示した。
続いて、11月6日に行われる米国の中間選挙を取り上げ、「下院は民主党が過半数を取り返し、上院は共和党が過半数を維持する」との見通しをメインシナリオとして提示。結果、「下院でトランプ政権の疑惑に対する調査が始まり、民主党が関心を示すインフラ支出以外の政策実施が遅れる可能性がある」との見方を示した。
これらの見方を踏まえ、フーパー氏は米国株式が短期的に調整する可能性を指摘すると同時に、日本、欧州、新興国などで選別的な投資機会を探るべきとした。アクティブ運用の重要性にも言及し、「株価下落時にディフェンシブなポートフォリオで守りを固めつつも割安な銘柄に投資できる好機となり得る」との見方を示した。(2)へつづく
提供:モーニングスター社