企業年金運用で「オルタナティブ」の資産配分が「国内債券」を初めて逆転=JPモルガン・アセットの調査
JPモルガン・アセット・マネジメントの「企業年金運用動向調査」の最新版がまとまり、企業年金の運用に大きな変化が起きていることが明確になった。同調査をまとめている同社グローバル運用商品部インベストメント・スペシャリストの國京彬氏は、「企業年金運用は、過去5年前と比較できないほどにポートフォリオ改革に取り組み、株式等の大幅下落など市況変動への耐性はついてきている。ただ、世界的な低金利によって債券の果たせる役割が限定的となっており、今後の市況変動への備えには一層の工夫が必要だ」と分析している。
◆「オルタナティブ」への配分は史上最高
「企業年金運用動向調査」は、2008年にスタートした。今回は2019年3−5月に実施し、国内の確定給付型企業年金(DB年金)を中心に116の年金から回答を得た。年金の運用資産規模は、3000億円以上から500億円未満まで分散されている。
國京氏は、DB年金の運用について、「80年代前半は国内金利が5%台の時代であり、年金運用も国内債券中心で予定利率5.5%を実現できた。80年代後半から伝統4資産運用が始まり、企業年金が株式を組み入れる運用にシフトしたが、その後のバブル崩壊と金利低下によって、運用成績が悪化。予定利率の引き下げが始まった。そして、2000年のITバブル崩壊によって年金運用のマイナスリターンを経験し、伝統4資産に加えてヘッジファンド等のオルタナティブ資産を運用に活用するようになっていった」と振り返った。
そして、今回調査で初めて、「オルタナティブへの資産配分が21.3%と過去最高になるとともに、国内債券を逆転した。国内債券への配分比率は過去最低の18.1%まで減少した」と、年金運用の大きな変化を指摘した。「マイナス金利政策導入から3年余りとなり、政策アセットミックスの見直しによって国内債券への配分比率をどの年金も落とさざるを得なかった」と分析している。国内債券で運用していた資金は、一部はヘッジ付外国債券に流れ、一部はオルタナティブに配分されるようになっている。
<インカム重視への運用ニーズが拡大>
同社は、オルタナティブ資産の内訳も含めて詳細な調査を行っている。2000年代にオルタナティブ運用が導入された当時は、「絶対収益型FoF」を中心としたヘッジファンドが主流だったが、現在では「マルチアセット」「株式ロング・ショート」「実物不動産」「内外REIT」「インフラ」「プライベートエクイティ」「プライベート・デット」「保険関連」など、様々な手法が取り入れられている。しかも。平均3−4の戦略を複数保有する「併せ持ち」が常態化しているという。
そして、今後の資産配分の方向性は、「国内債券」「国内株式」「外国株式」については、配分減少の回答が多い。半面、「オルタナティブ」については、39.7%が配分増加・新規投資と回答し、引き続き、積極的にオルタナティブに資産配分していく意向であることが分かった。
ただ、オルタナティブへの配分増加との回答率は、2017年には65%、18年にも59.2%だったが、19年には39.7%と減少している。國京氏は、「ここ数年の積極的なオルタナティブ投資から、様子見姿勢に転じつつある」とみている。
また、今後増加させたいと考えられているオルタナティブは、リターンが出にくくなっている「絶対収益型」「保険関連」といった伝統4資産との低相関で安定運用が見込まれる商品群から、「実物不動産」や「インフラ投資」「プライベート・デット」など高いインカムが期待される戦略に移っている。「国内債券の堰堤的なリターンが得られなくなった現在、流動性を犠牲にしてでもインカムを求めるというニーズが強い」(國京氏)といえる。
<運用難は今後10年−15年でも継続する見通し>
JPモルガン・アセット・マネジメントの中期見通しでは、米国の景気サイクルは現在が景気拡大の「後期」にあたっている。「景気後退期入りを控えて株式も債券も運用しにくい環境となっている。運用難は当面は継続しそうだ」という厳しい見通しにある。
また、「実体経済の低成長によって期待リターンは過去に比べて低水準。一方、景気サイクルの成熟化によってバリエーション等は高水準で、長期の目線で策定する期待リターンの引き下げ圧力になっている」と、運用難は10−15年という長期に続く可能性があると予測している。すでに、予定利率は年2%台前半にまで引き下がっているが、世界的な低金利によって年金運用の苦難は続きそうだ。
提供:モーニングスター社
◆「オルタナティブ」への配分は史上最高
「企業年金運用動向調査」は、2008年にスタートした。今回は2019年3−5月に実施し、国内の確定給付型企業年金(DB年金)を中心に116の年金から回答を得た。年金の運用資産規模は、3000億円以上から500億円未満まで分散されている。
國京氏は、DB年金の運用について、「80年代前半は国内金利が5%台の時代であり、年金運用も国内債券中心で予定利率5.5%を実現できた。80年代後半から伝統4資産運用が始まり、企業年金が株式を組み入れる運用にシフトしたが、その後のバブル崩壊と金利低下によって、運用成績が悪化。予定利率の引き下げが始まった。そして、2000年のITバブル崩壊によって年金運用のマイナスリターンを経験し、伝統4資産に加えてヘッジファンド等のオルタナティブ資産を運用に活用するようになっていった」と振り返った。
そして、今回調査で初めて、「オルタナティブへの資産配分が21.3%と過去最高になるとともに、国内債券を逆転した。国内債券への配分比率は過去最低の18.1%まで減少した」と、年金運用の大きな変化を指摘した。「マイナス金利政策導入から3年余りとなり、政策アセットミックスの見直しによって国内債券への配分比率をどの年金も落とさざるを得なかった」と分析している。国内債券で運用していた資金は、一部はヘッジ付外国債券に流れ、一部はオルタナティブに配分されるようになっている。
<インカム重視への運用ニーズが拡大>
同社は、オルタナティブ資産の内訳も含めて詳細な調査を行っている。2000年代にオルタナティブ運用が導入された当時は、「絶対収益型FoF」を中心としたヘッジファンドが主流だったが、現在では「マルチアセット」「株式ロング・ショート」「実物不動産」「内外REIT」「インフラ」「プライベートエクイティ」「プライベート・デット」「保険関連」など、様々な手法が取り入れられている。しかも。平均3−4の戦略を複数保有する「併せ持ち」が常態化しているという。
そして、今後の資産配分の方向性は、「国内債券」「国内株式」「外国株式」については、配分減少の回答が多い。半面、「オルタナティブ」については、39.7%が配分増加・新規投資と回答し、引き続き、積極的にオルタナティブに資産配分していく意向であることが分かった。
ただ、オルタナティブへの配分増加との回答率は、2017年には65%、18年にも59.2%だったが、19年には39.7%と減少している。國京氏は、「ここ数年の積極的なオルタナティブ投資から、様子見姿勢に転じつつある」とみている。
また、今後増加させたいと考えられているオルタナティブは、リターンが出にくくなっている「絶対収益型」「保険関連」といった伝統4資産との低相関で安定運用が見込まれる商品群から、「実物不動産」や「インフラ投資」「プライベート・デット」など高いインカムが期待される戦略に移っている。「国内債券の堰堤的なリターンが得られなくなった現在、流動性を犠牲にしてでもインカムを求めるというニーズが強い」(國京氏)といえる。
<運用難は今後10年−15年でも継続する見通し>
JPモルガン・アセット・マネジメントの中期見通しでは、米国の景気サイクルは現在が景気拡大の「後期」にあたっている。「景気後退期入りを控えて株式も債券も運用しにくい環境となっている。運用難は当面は継続しそうだ」という厳しい見通しにある。
また、「実体経済の低成長によって期待リターンは過去に比べて低水準。一方、景気サイクルの成熟化によってバリエーション等は高水準で、長期の目線で策定する期待リターンの引き下げ圧力になっている」と、運用難は10−15年という長期に続く可能性があると予測している。すでに、予定利率は年2%台前半にまで引き下がっているが、世界的な低金利によって年金運用の苦難は続きそうだ。
提供:モーニングスター社