投資成績に悲観的な日本の投資家、グローバルで年平均10%超に対し6%の回答

 シュローダーが世界の投資家2万3000人超を対象に実施した意識調査で、コロナ後の今後5年間の投資リターンについて、日本の投資家が世界で最も悲観的な見通しを持っていることが分かった。この結果の背景については、同調査結果だけでは明瞭に分からないが、過度に悲観的な目標を持ってしまうと、少しの価格上昇で利益確定の誘惑にかられるなど、長期投資を阻害する要因になりかねない。

 国内でシュローダー・インベストメント・マネジメントなどを展開するシュローダー・グループ(本社:英国ロンドン)は、2020年4月30日−6月15日、インターネットを使って、世界32カ国/地域の2万3450人の投資家(1万ユーロ以上を今後12カ月間で投資尾する予定があり、かつ、過去10年間に何らかの投資行動をとった投資家)を対象とした意識調査「シュローダー・グローバル投資家意識調査2020」を実施。その結果の一部を9月14日に発表した。

 この調査で、「今後5年間の投資リターン」の予想について聞いたところ、世界の投資家は平均で年10%超と予想した。地域別にみると、米州が回答者の平均で13.2%と高く、アジアは11.5%、欧州は9.4%だった。国別にみると、米国が15.4%と最も高く予想し、インドネシア14.8%、アルゼンチン14.6%がトップ3となった。反対に、保守的な見方をしたのは、日本の6.0%が最低で、スイス7.0%、イタリア7.9%が続いた。

 日本の投資家は、新型コロナウイルスが経済に悪影響を及ぼす期間を、平均で2.35年と予測し、世界の投資家の平均値1.73年と比べて長く影響が残ると考えていることが、将来の期待リターンを低くしている要因の1つになると考えられる。

 一方、コロナショックに襲われた2020年2月から3月の間に資産配分を変更したかどうかを聞くと、日本の投資家で資産配分の変更をしたのは57%と、世界の投資家の平均78%よりも低い割合だった。ただ、日本の投資家の中でも、投資知識が豊富な「上級」投資家は87%が投資配分変更を行っており、中級者の61%、初心者の44%と対照的だった。日本の投資家の中でも、より投資の研究をしている層は、世界の投資家を上回るほどに資産状況のチェックとメンテナンスを行っていることがうかがえる。

 また、今回のコロナショックによって、「自身の投資について週に一度考える」と答えた日本の投資家は、パンデミック以降46%と、それ以前の30%に比べ増加し、不確実性が増す中で、より資産管理に神経を使うようになったことが分かる。

 今回の調査で、日本の投資家の投資リターン見通しが低く出たのは、マザーマーケットである日本の株価がここ数年にわたって、米国株式などと比較して大きく動いていないことが影響している可能性がある。たとえば、今年8月末を基準として過去5年間のトータルリターンを調べると、米国の代表的な株価指数S&P500(配当込み、円ベース)は年率11.16%になることに対し、日本の日経平均株価は同4.14%に過ぎない。シュローダーのアンケートでは、米国の投資家と日本の投資家の予想リターンの差は15.4%と6.0%であり、ちょうど株価のパフォーマンスの差と同等の開きが予想パフォーマンスの差として表れている。

 資産運用の世界では、「ホームカントリーバイアス」という言葉があり、機関投資家も含めて投資家は、運用資産の大部分を国内の株式市場や債券市場で運用しがちであるという傾向がある。実際に、日本で「今日は株が高かった」という場合、多くの個人投資家が意識しているのは日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)の値動きを示しているといえる。日々の情報が取りやすく、馴染みも深いため、この傾向は避けられない。

 ただ、国内投信は、広く海外の株式や債券に投資する手段を提供している。しかも、近年のインデックスファンドの手数料引き下げ競争によって、海外の株式に投資するファンドの手数料水準は、国内株式に投資する手数料と変わらない水準になってきた。日米の株式投資であれば、代表的なインデックスに投資するファンドでは日経平均株価より、S&P500の方が安いくらいだ。

 投資に対する期待リターンが低いと、そもそも投資への関心が高まらないなど、投資に関するリテラシーを高めるには好ましい状況とはいえない。せっかく投資ツールとしての投資信託の商品ラインナップが充実してきたところだ。それら商品を十分に使って、グローバルな投資市場を視野に入れた投資が定着するよう、投資アドバイザーを始め業界の努力が求められるところだ。
提供:モーニングスター社
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