野村HDと地銀3行、リモートでの金融コンサルに特化した合弁会社を設立へ

 野村ホールディングスは5月10日、千葉銀行、第四北越銀行、および、中国銀行の四社間で、リモートでの金融コンサルティングサービスを提供する合弁会社の設立の検討に関する基本合意書を締結したと発表した。提携各社が抱える富裕層を対象に、投資助言によるコンサルティング・フィー(手数料)で運営する新しい金融サービス会社を設立する計画だという。2021年度第2四半期をメドに準備会社を設立する予定で協議を進めるとしている。

 提携する地方銀行3行は、いずれも「TSUBASAアライアンス」という地銀広域連携に参加している。「TSUBASAアライアンス」は2015年10月に千葉銀行、第四銀行(現・第四北越銀行)、中国銀行の3行で発足し、その後、伊予銀行、東邦銀行、北洋銀行、武蔵野銀行、滋賀銀行、琉球銀行、群馬銀行が参加して、事務・システムの共同化や相続関連業務、国際業務、グループ会社の活用など幅広い分野で協業を行って、多くの成果をあげてきている。今回の基本合意は、「TSUBASAアライアンス」の発足時の3行と野村HDとの合弁会社設立に関するものだが、今後は「TSUBASAアライアンス」の参加行が合流する可能性があると考えることが自然だろう。

 野村ホールディングスでは、今回の基本合意書の締結には、少子高齢化の進展による社会保障制度の見直しが進む一方、「人生100年時代」に対応した自助努力の備えへの関心の高まりなど金融環境が大きく変化し、かつ、コロナ禍による働き方や生活スタイルが変化したことによってデジタルチャネルを通じたリモートの面談や取引が広がってきたことを背景に、証券と銀行という業態の垣根を超えて広く金融サービスノウハウを統合した新サービスへのニーズがあるとしている。

 新サービスは、「フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)の観点からライフプランを踏まえた提案」、「特定の金融機関には属さない中立性」、そして、「専任のアドバイザーによるサービス提供」という3点をポイントとして、今後、具体的なサービス内容を検討していくという。WEBセミナーやメール相談、リモート相談などを通じて、ワンストップの金融サービスを、年齢層を問わずに幅広く提供していく考えだ。

 既存の金融サービスでは、コンサルティング・フィーは、金融商品の販売手数料や運用コストで回収するという考えで運営され、「相談に関する手数料」を別途徴収するようなサービスは日本では定着していない。米国などでは、金融仲介業務も行いながらも、別途、コンサルティング・フィーを徴収するIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)が大きな存在となっていることとは大きな違いだ。

 今回、設立が検討されている合弁会社は、「金融商品仲介業者とは異なり、金融商品や金融サービスの媒介等は行わない予定」としている。これまでの金融機関の相談業務は、ともすれば、「商品ありき」のコンサルティングに流れ、「米国株式に投資する投資信託を販売するために、米国株式で運用するメリットを強調するようなアドバイス」がなされるようなこともあっただろう。今回の合弁会社は、金融商品の販売を行わないからこその中立性が期待され、かつ、訓練を受けた専任の担当者が提供する投資助言になる。今後の協議によって、野村證券グループのノウハウと地銀各行のノウハウを融合することによって具体的なサービス内容を固めていくというが、「手数料を支払う価値がある」と顧客が納得するような内容が期待される。新しい時代を拓く可能性のある協業として、どのようなサービス内容を提供するのかなど、続報を待ちたい。
提供:モーニングスター社
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