2022年はリターンが低下し、ボラティリティーが増大する=HSBCアセットマネジメントの見通し

 HSBC投信は1月19日、メディア向けの新春オンラインセミナーを開催した。HSBCアセットマネジメントのグローバル・チーフ・ストラテジストのジョー・リトル氏は、「2021年にはリスク資産は素晴らしい成績を残すことができたが、22年は『成功の対価(The price of success)』を求められる。リスク資産のリターンの低下を前提に投資戦略を組み立てる必要がある」と語った。

 リトル氏は、「世界経済は現在、景気サイクル中盤期の『景気拡大』局面にある。GDPと企業利益の成長率はピークを過ぎており、インフレ率は上昇し、政策は正常化に向かいつつある」と基本的な現状認識を語った。「22年の世界の経済成長率は4−5%程度となり、企業利益は1ケタ台の後半を確保できそうなので、決して悪くはないのだが、リターンの低下を受け入れなければならない」としている。経済成長の重しになるインフレ(物価上昇)は、年前半は厳しいものの、後半に落ち着いてくるという見通しだ。

 そして、「過去18カ月にわたって、投資家は高水準のリターンを享受してきたが、その大半は将来から借りたものといえ、この返済を求められる。市場におけるバリュエーションの上昇と安全マージンの低下によって、マクロの見通しは悪化している。ボラティリティー(価格変動率)の増大に備えたい」という。全体としては投資家にとっては判断が難しい環境になるという。

 また、中国経済については、信用引き締めと規制強化が引き続き経済活動を抑制しているが、金融を緩和して不動産業界の信用不安やオミクロン株の感染拡大などのショックに備えるステージに入っているとした。中国の経済成長は当面は年5%程度にとどまることを投資家は受け入れなければならないという。ただ、「中国に対しては、投資家はかなり悲観的な見方をしており、今後、ニュースの内容が改善すると、ディスカウント状態に下落した株価の戻りが期待できる。第1、第2四半期には投資機会が訪れると考えている」と語っていた。

 そのような見通しの中で、株式の方が債券よりも魅力的な投資資産であるとして「ディフェンシブ株(クオリティー、ESG、デジタルエコノミー)とシクリカル(景気敏感)株を同時に保有する慎重な『バーベル・アプローチ』は有効」とした。また、高値に上昇した米国株式と比較すると、出遅れている欧州株式や日本株式にはチャンスがあり、アジアの新興国株式も大きく出遅れていて妙味があると語っていた。

 一方、HSBCアセットマネジメントの責任投資グローバル責任者のスチュアート・カーク氏は、昨年開催されたCOP26において様々な合意がなされたことを評価するとともに、特に、「インドが2070年までにネットゼロを目標に掲げたことを評価したい。2030年までに国内で使用する電力の50%を再生可能エネルギーに置き換えるという目標も掲げたが、現在の再生可能エネルギー比率は20%程度であり、これからかなりの投資が実施される見通しだ」と語っていた。そして、今後のカーボントレーディング市場の拡大と自然資本の投資市場の拡大に注目しているとした。
提供:モーニングスター社
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