残高10億円未満のファンド、5年で約2割減

 国内公募追加型株式投信(ETF除く)のうち、純資産残高10億円未満のファンド数の推移を確認したところ、2023年4月末時点で5年前に比べて2割近く減少していることが分かった。「貯蓄から投資へ」という流れが強まる中で、運用会社が残高の大きな旗艦ファンドに重点を置いていることが背景にあると見られる。

 10年前(2013年4月末時点)、5年前(2018年4月末時点)、そして2023年4月末時点における、国内公募追加型株式投信(ETF除く、以下全ファンド)の本数とそのうち純資産残高10億円未満(以下、残高10億円未満)のファンドの本数、及び残高10億円未満の全体に占める割合を調べた。

 2023年4月末時点は、全ファンドが5297本、残高10億円未満が1744本となり、残高10億円未満の割合は32.9%となった。10年前と比較すると、本数は全ファンドで40.5%増、残高10億円未満で27.4%増とともに増加した。全ファンドの伸び率が残高10億円未満を上回るため、残高10億円未満の割合は10年前の36.3%から3.4%低下した。

 全ファンド、残高10億円未満の本数ともに10年前比で2ケタの増加となったが、10年間を前半(2013年4月−2018年4月)と後半(2018年4月−2023年4月)に分けると、対照的な結果となった。

 前半を見ると、本数は全ファンドで41.9%増、残高10億円未満は全ファンドを上回る53.9%増となり、残高10億円未満の割合は36.3%から39.4%へと3.1%上昇した。一方、後半を見ると、本数は全ファンドで1.0%減、残高10億円未満は17.2%減となり、残高10億円未満の割合は39.4%から32.9%へと6.5%低下した。

 前半は、投資家の需要を上回るファンドが設定された結果、小粒ファンドが増加したと見られる。後半は、期間中にも一定数のファンドが設定されたことを考慮すると、長期投資に適したファンドに対するニーズの高まりを背景に、運用会社が旗艦ファンドを育成すると同時に低残高ファンドの見直しを進めた結果と見られる。

 日本経済新聞は31日、「野村アセットマネジメントが2030年までに投信の本数を半分程度に絞る」と報じた。「貯蓄から投資へ」の広がりにより、長期投資に適したファンドを志向する動きが強まっている。残高10億円未満のファンドは、意図した運用が難しくなる可能性などから償還リスクが意識されざるを得ず、投資家の視線は一段と厳しくなると見られる。

 なお、全ファンドのうち、2023年4月末時点のウエルスアドバイザーのレーティングが最上位の5ツ星となったファンドは375本あり、うち残高10億円未満は119本と31.7%を占める。高パフォーマンスでありながら残高が10億円に満たないファンドには、投資家への積極的なPRなどのテコ入れが期待される。
提供:ウエルスアドバイザー社
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