注目は「株高基調の東南アジア」―新興国は資本市場の整備・拡充でさらなる投資マネー流入見込む

 資産運用会社ヴァン・エック・グローバルの新興国市場チーム責任者のデービッド・センプル氏が9月16日、17日にシカゴで開催された米モーニングスターの「ETF・インベスト・カンファレンス」で講演し、新興国の経済と株式相場の見通しについて語った。

 センプル氏は、新興国経済が引き続き成長しているにもかかわらず、世界の株式市場を対象としたMSCI指数における新興国市場のウエートは12%と依然として小さく、世界のGDP(国内総生産)に占める新興国の割合に比べるとかなり低いと指摘した。

 同氏はカンファレンス開催中に行われた米モーニングスターとのインタビューで、「従来は先進国に比べてさまざまなリスクがある分、新興国の株式は安く売買されていた。しかし、こうした状況は今後変わるだろう。新興国の資本市場の整備・拡充が進むにつれてリスクは低くなる。これにより、従来よりも実体経済の成長を反映するかたちで新興国の市場に資金が流入するようになる」と話した。

 新興国の公的債務残高は数年前に比べて大きく改善しており、民間企業の債務残高もキャッシュフローが設備投資や配当金などの支出額を上回っているため低水準にあるとされる。ヴァン・エックでは、新興国企業の平均的なフリーキャッシュフロー利回り(株価に対する1株当たりフリーキャッシュフローの比率)は11年末まで5−7%を維持すると予想している。

 新興国市場は先進国の景気悪化やデフレに対するウォール街の懸念、さらには先進国の信用不安の「人質」になっているようなもので、短期的にはこうした先進国の要因が影響するという。ただ、新興国が世界に開かれたオープンな市場であり続ければ、中間所得層がさらに拡大し、通貨の価値も上昇すると見込まれる。新興国が伝統的な輸出主導の重商主義的な体制から脱却しようとすれば、いくつかの困難に直面する可能性がある。ただ、過去にしばしばみられたバブルの発生と崩壊を繰り返すような事態にはならないとみている。

 ETF(上場投資信託)の登場により、以前は難しかった一部の新興国市場への投資も可能になったが、株式の価格変動リスクに加えて投資対象国の政治リスクを軽視しないよう同氏はアドバイスする。新興国の大手企業の多くは国営企業で、少数株主の利益が無視される恐れがあるからだ。

 新興国株式は足元で、投資意欲をかき立てられるほど割安ではないという。ただ、世界経済が最悪のシナリオに向かわなければ、新興国は比較的高い成長率を保つと予想している。

 米モーニングスターのインタビューで注目している国について聞かれたセンプル氏は、東南アジア株式の好パフォーマンスに触れ、「特にインドネシアは年初から株価も通貨も非常に堅調だ」と述べた。政治の安定など構造的な変化が背景にあるとした。株価が上昇基調を続けているフィリピンやタイにも関心があると語った。

 中国経済の先行きに対しては楽観的な見方はしていないものの、「中国経済をめぐる問題は誇張されている。景気刺激策を終了してもソフトランディング(軟着陸)することは可能だ」とした。ロシアは石油・天然ガス関連企業はこれらの企業に課される税の問題があるため避けるべきとするが、それ以外の銘柄については妙味があるとみている。南米ではブラジルを興味のあるマーケットの1つとして挙げた。
提供:モーニングスター社
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