ECBのマイナス金利で欧州債に異常事態、ハイイールド債ファンドが人気化

 ECB(欧州中央銀行)は6月5日、異例のマイナス金利導入を発表した。マイナス金利とは、民間銀行がECBに資金を預けると利子が差し引かれる政策だ。ユーロ圏では、5月消費者物価指数の上昇率(前年同月比)が0.5%とデフレ寸前ともいえる状態にある。ECBは、マイナス金利や条件付きの資金供給オペなど今回決定した一連の政策により物価上昇に取り組む。

 これを受けて、欧州諸国の債券利回りは近年まれにみる水準まで低下している。6月12日時点の10年物国債利回りを見ると、EU(欧州連合)加盟国で経済規模が最大のドイツは約1.4%、イタリア、スペインなどの南欧諸国は約2.6−2.8%となっている。つい2年ほど前には、「自力での資金調達が困難な水準」とされる約7.0%を超えていた南欧諸国の国債利回りが、今では世界で最も安全とされる米国債(直近では約2.6%)と変わらないという、異常とも言える状態だ。

 こうした債券市場での利回り低下を受けて、利回りが相対的に高いハイイールド債への資金流入が続いている。国内追加型株式投信(DC、SMA、ETFなど除く)の純資金流出入額を見ると、モーニングスターの類似ファンド分類「国際債券・ハイイールド債(為替ヘッジなし)」が14年3月から3カ月連続で1位となった。同分類の流入額は、14年5月(推計値)が1983億円と2000億円の大台に迫る。直近で月間2000億円以上の流入があったのは、日銀の大規模な金融緩和で「国内大型ブレンド」に2939億円が流入した13年5月であり、14年5月のハイイールド債ファンドへの流入額はそれ以来の高水準だ。

 「国際債券・ハイイールド債(為替ヘッジなし)」のなかでも、とりわけ欧州ハイイールド債を投資対象とするファンドへの流入が大きい。通貨選択型ファンドが含まれる点には留意が必要だが、14年5月の同分類内における資金流入上位10本を見ると、6本が欧州ハイイールド債を主要な投資対象とするファンドとなった。

 もっとも、ファンドなどを通じた資金流入によりハイイールド債の利回りが低下すれば、既存の投資家は債券価格の上昇という恩恵を受けられる一方で、新規の投資家にとっては利回り面での魅力低下につながる。こうした傾向が続けば、高利回り商品の人気が高い国内では、REIT(不動産投資信託)や高配当株式といった他の高利回り商品へ新規の投資先が移る可能性もある。
提供:モーニングスター社
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