<J−REIT>ボラティリティを警戒しながらも割安銘柄に集中投資=DIAMアセットマネジメント(上)
日銀のマイナス金利政策の余波でMMFが募集停止になるなど投信業界にも影響が及んでいる。なにより、国債利回りがマイナス圏に沈んだことで、安定した運用を求める投資家の選択肢を狭くしてしまった。その中で、J−REITの配当利回りが注目されている。運用資産残高が大きなJ−REITファンドを運用している運用担当者に、当面のJ−REIT市場の見方や運用方針を聞いた。
「DIAM J−REITオープン(毎月決算コース)」(愛称:オーナーズ・インカム)<2003122501>(★★★、評価基準日=2月29日)は、純資産が1550億円を超える。DIAMアセットマネジメント 株式運用本部REIT運用グループ グループリーダーの佐藤紀行氏に聞いた。
――現在のJ−REIT市場の見方は?
日銀のマイナス金利の導入によって金利や利回りに対するニーズが高まっています。国債への投資では利回りが得られないため、好配当株式やJ−REITに資金が流れることは理解しやすい動きです。2月末現在でJ−REITの平均配当利回りは3.3%ですから、利回りを求める資金の受け皿候補のひとつとみなされ資金流入が続いています。マイナス金利が発表された1月末から2月初めの資金が大きく流入し、その後もジリジリと値を上げています。J−REITにとって良好な環境であると言ってよいでしょう。
ただ、このように良好な環境ではありますが、2014年に先んじてマイナス金利を導入した欧州のREITのこれまでの推移もある程度参考にしておく必要があるかもしれません。欧州においても、マイナス金利導入当時は、利回り水準で魅力のあった欧州REITが選好され購入が活発化する動きもありました。しかし、マイナス金利の欧州経済に及ぼす効果が今一つ不明確であるなかで、景気の鈍化が取りざたされるとともに、CDSのスプレッド拡大などクレジット市場環境が大きく悪化していく局面では、欧州主要国の長期金利がマイナス圏まで大きく低下したにもかかわらず欧州REITの価格はむしろ下落しています。金利水準と配当利回りの比較だけでは説明できない局面があることも念頭に置く必要があります
J−REITには、他資産対比でみた相対的な利回りの高さや、実物不動産市場の活性化を受けた価格上昇期待がある一方で、マクロ経済の影響などによる賃料収入や入居率などREITのキャッシュフローの源泉となる数字の悪化や、クレジット環境の悪化によるリスク許容度の低下に対しては敏感であり、価格下落リスクがあることには注意が必要です。価格下落については、昨年は東証REIT指数が2000ポイントから一時1500ポイント割れまで下落する局面もありましたし、2013年にも1700ポイントから1200ポイントまで調整したことも記憶に新しいところです。
現在、J−REITの収益環境は良好です。空室率は低く、賃料収入は緩やかに拡大する方向にあります。このため価格がすぐに大きく崩れる心配は小さいのではないかとみています。ただ、不動産市況を見ますと、都心と比較して地方では賃料低下がまだ続いている動きもあるなど、裾野が広がらず回復にまだ力強さを欠く面もあります。今後の推移を見守っているところです。
現在、世界的には原油・資源価格の下落やクレジット市場の動揺などを見てもリスク許容度が低下していますが、こうした不安定でボラティリティ(変動率)の高まった市場環境下では、足元ファンダメンタルズが回復軌道にあるJ−REITの安定した配当収入は、やはり相応の安心感を与えるものとみています。特に中・長期で利回りを享受したい投資家にとっては引き続き魅力的な投資対象であると考えています。ただし、J−REITの利回りを手掛かりに投資する場合、個別のJ−REITの保有物件の中身などをきちんと調べた上で、投資判断することが必要です。J−REITの配当は、債券のクーポンと違って変動する可能性がある点にも留意して上手に付き合って欲しい資産です。
(下)へつづく
提供:モーニングスター社
「DIAM J−REITオープン(毎月決算コース)」(愛称:オーナーズ・インカム)<2003122501>(★★★、評価基準日=2月29日)は、純資産が1550億円を超える。DIAMアセットマネジメント 株式運用本部REIT運用グループ グループリーダーの佐藤紀行氏に聞いた。
――現在のJ−REIT市場の見方は?
日銀のマイナス金利の導入によって金利や利回りに対するニーズが高まっています。国債への投資では利回りが得られないため、好配当株式やJ−REITに資金が流れることは理解しやすい動きです。2月末現在でJ−REITの平均配当利回りは3.3%ですから、利回りを求める資金の受け皿候補のひとつとみなされ資金流入が続いています。マイナス金利が発表された1月末から2月初めの資金が大きく流入し、その後もジリジリと値を上げています。J−REITにとって良好な環境であると言ってよいでしょう。
ただ、このように良好な環境ではありますが、2014年に先んじてマイナス金利を導入した欧州のREITのこれまでの推移もある程度参考にしておく必要があるかもしれません。欧州においても、マイナス金利導入当時は、利回り水準で魅力のあった欧州REITが選好され購入が活発化する動きもありました。しかし、マイナス金利の欧州経済に及ぼす効果が今一つ不明確であるなかで、景気の鈍化が取りざたされるとともに、CDSのスプレッド拡大などクレジット市場環境が大きく悪化していく局面では、欧州主要国の長期金利がマイナス圏まで大きく低下したにもかかわらず欧州REITの価格はむしろ下落しています。金利水準と配当利回りの比較だけでは説明できない局面があることも念頭に置く必要があります
J−REITには、他資産対比でみた相対的な利回りの高さや、実物不動産市場の活性化を受けた価格上昇期待がある一方で、マクロ経済の影響などによる賃料収入や入居率などREITのキャッシュフローの源泉となる数字の悪化や、クレジット環境の悪化によるリスク許容度の低下に対しては敏感であり、価格下落リスクがあることには注意が必要です。価格下落については、昨年は東証REIT指数が2000ポイントから一時1500ポイント割れまで下落する局面もありましたし、2013年にも1700ポイントから1200ポイントまで調整したことも記憶に新しいところです。
現在、J−REITの収益環境は良好です。空室率は低く、賃料収入は緩やかに拡大する方向にあります。このため価格がすぐに大きく崩れる心配は小さいのではないかとみています。ただ、不動産市況を見ますと、都心と比較して地方では賃料低下がまだ続いている動きもあるなど、裾野が広がらず回復にまだ力強さを欠く面もあります。今後の推移を見守っているところです。
現在、世界的には原油・資源価格の下落やクレジット市場の動揺などを見てもリスク許容度が低下していますが、こうした不安定でボラティリティ(変動率)の高まった市場環境下では、足元ファンダメンタルズが回復軌道にあるJ−REITの安定した配当収入は、やはり相応の安心感を与えるものとみています。特に中・長期で利回りを享受したい投資家にとっては引き続き魅力的な投資対象であると考えています。ただし、J−REITの利回りを手掛かりに投資する場合、個別のJ−REITの保有物件の中身などをきちんと調べた上で、投資判断することが必要です。J−REITの配当は、債券のクーポンと違って変動する可能性がある点にも留意して上手に付き合って欲しい資産です。
(下)へつづく
提供:モーニングスター社