野村アセットマネジメント、常に最高の満足を届けるため顧客本位の業務運営に率先して取り組む

 金融庁が今年3月に示した「顧客本位の業務運営に関する原則」に対し、主な金融機関は6月末までに原則を採択している。野村アセットマネジメントの商品本部副本部長兼商品企画部長の渡部昭裕氏、責任投資調査部長の今村敏之氏、総合企画部シニア・マネージャーの平川幸雄氏に、同社の取り組みについて聞いた。

 ――スチュワードシップ・コード導入後の3年余りを振り返った感想は?

今村 米アップルが自社のサプライヤーに独自の規範(サプライヤー責任)を課し、違反すると取引を中止するように、企業がESGをビジネス上考慮することはもはや当たり前になってきている。また、日本企業で相次いだ不正会計などの不祥事も、ESGの重要性を見直す契機になっている。ESGは企業の持続性にかかる問題だが、財務データに現れない非財務情報を理解するには、企業との建設的な対話が必要だ。

 企業側も財務・非財務情報を整理して1つにまとめた「統合報告書」の発行が増えつつある。統合報告書の発行によって、財務と非財務の関係性、事業戦略の中でのESGの位置づけなど、企業が改めて自らを見つめ直し、考えを整理するいい機会になっている。発行することそのものより、考えるプロセスが企業価値向上にとって大切だ。

 運用者やアナリストが投資先企業の5年後、10年後の姿をイメージするためには、経営者が何を目指しているのかを正しく理解することが重要だ。その為には、経営トップが自らの言葉できちんと語れることも大事になる。対話の質を高めていきたい。

 一方、議決権行使の個別開示は、17年1−3月分を公表した。インベストメントチェーン全体を考えると、個別開示することで一段と透明性も高まり運用業界への信頼性が向上するとともに、運用会社と事業会社との間に適度な緊張感が生まれ、規律も高まると考えられる。また、議決権行使が注目されることで運用会社の議案判断の高度化や、投資先企業のガバナンス改革のスピード化にもつながると考えた。4半期ごとに公表していく予定だ。

 ――利益相反の適切な管理をめぐって新たな対応策等は?

平川 投資信託にかかる利益相反は、独立社外取締役が過半を占める「ファンド業務運営諮問会議」で、また、スチュワードシップ活動は、社外取締役と利益相反管理統括責任者による「責任投資諮問会議」で活動方針の策定等を行い、かつ、管理運営状況を監視している。

 また、一般的に、ガバナンスは形骸化がよく指摘されるが、当社では指名委員会等設置会社として経営の監督と執行を分離するほか、野村グループ外から選んだ独立社外取締役として元DIAMアセットマネジメント社長の長濱力雄氏、企業法務に詳しい弁護士の木村明子氏に入っていただいて、積極的に外部のご意見を頂戴している。

 昨年9月15日に、利益相反の適切な管理について考え方をまとめて公表したが、「運用・調査の意思決定に係る独立性の確保」「運用・調査にかかる人材の独立性の確保」「グループ間における運用・調査にかかる情報の遮断」「スチュワードシップ活動における利益相反の回避」などステップを踏んで拡充してきている。

今村 利益相反は、実際に「ない」ことを「ない」と証明することが難しい。「ある」という前提にたって、きちんと管理できるような体制をつくった。実は議決権行使における利益相反管理とは、議案をきちんと少数株主の視点に立って正しく判断することが重要だ。それが可能なプロセスに昨年変更している。

 ――分かりやすい情報の提供は?

渡部 毎年、プロジェクトチームを作って、いかに分かりやすい資料を作るのかについて課題を出し、目標を設けて一歩ずつ改善している。あらゆる資料を見直している。さらに、フィンテックなど新しいテクノロジーも取り入れて、インデックスファンドシリーズ「Funds−i」へのロボ・アドバイザーの導入、投資啓発ツールとしてのスマホアプリ「moneby(マネビー)」の開発などにトライしている。

 また、個人投資家のお客さまと接する機会が少ないことを補うため、お客さまの声を直接聞く機会として、各種の投資家意識調査を継続して実施している。

 ――KPI(客観的に評価できる成果目標)の公表は?

平川 毎年公表できるKPIを、どのように設定するのかを検討しているところだ。お客さまの範囲が広く、かつ、取り扱いファンドの種類も多いことから、幅広い業務分野を網羅できるKPIの設定に知恵を絞っている。KPIによってPDCAサイクルを回し、お客さまに常に最高のご満足をお届けすることができるよう努力していきたい。
提供:モーニングスター社
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