うまくいかない「勝ち組」の後追い、米国株式長期で検証

 7日の米国株式市場でハイテク銘柄が多いナスダック総合指数が上昇し、年初来のリターンは0.08%とプラス圏に浮上した。同期間にダウ工業株30平均が−16.34%、S&P500種株価指数が−10.82%と、コロナ危機を受けて依然として二ケタのマイナスに沈む中で堅調さが目立つ。ハイテク株の良好なパフォーマンスの背景には、リモートワークの推進、巣ごもり消費の増加などがあり、「ポストコロナ時代」を今後けん引するとの見方も強い。

 もっとも、今回のハイテク株のように、値上がりした「勝ち組」セクターを後追いすることは優れた投資成果につながるだろうか。米国株式の20年以上のデータに基づきシミュレーションしたところ、「うまくいかない」という結果が導き出された。むしろ、何も考えずに複数のセクターに分散投資する、つまり市場全体に投資する手法の方が優れたパフォーマンスとなった。

 行ったシミュレーションの内容はこうだ。まず、算出可能な1999年−2020年(20年は4月末までの年初来)を対象に、米国モーニングスターのセクター別株価指数(全11セクター・米ドルベース)を用いて、暦年のリターンランキングを算出した。そして、(1)最もリターンが高かったセクターに翌年投資する「順張り」戦略(2)最もリターンが低かったセクターに翌年投資する「逆張り」戦略(3)全セクターを均等配分で保有する「分散投資」戦略――という3つの投資手法でどれが最も優れた成績となったかを見た。

 運用成績は「分散投資」の累積リターンが20年超で4.0倍と、「順張り」の2.7倍や「逆張り」の2.3倍を大きく上回る圧勝となった。「順張り」が低迷した要因を探ると、1999年のITバブルが大きく影響している。この年、テクノロジーセクターの株価指数は82.58%でダントツのリターンとなった。「順張り」では同セクターに翌年投資することになるが、00年はバブル崩壊で−35.38%と急低下し、全セクター中2番目に低いリターンだった。良好なパフォーマンスを後追いしたことが裏目に出た格好だ。

 確かに「順張り」がうまくいく場合もあるが、難しいのは株価上昇の勢いがどのくらい続くのかわからないことだ。同じことは「逆張り」についても言える。売られ過ぎた状態は長続きしないという前提で、株価が反発することを見込んだ投資手法だが、近年は売られ過ぎが比較的長く続くケースも見られる。

 典型的なのはエネルギー関連株だ。14年から19年までの6年間のうち5年間でエネルギーセクターの株価指数は全セクター中で最下位にとどまった。今回行った「逆張り」のパフォーマンスが振るわないのは同セクターの反発を見込んで投資し、そのほとんどで結果的に真逆の結果になったことが大きく関係している。ちなみにエネルギーセクターは2020年も4月末までに年初来で−36.07%と最下位を抜け出せていない。

 対照的に「分散投資」のパフォーマンスは、全セクターを均等保有しているので当然だが、大きく勝つこともなければ負けることもない。結果的にそれが長期で「順張り」や「逆張り」を上回るリターンにつながっている。なによりも、市場全体を保有し続けるだけなので、次に値上がりするセクターを考える必要がない。相場の先行きが極めて不透明ないまは特に、「平均的」狙いのこうした投資が重要性を増すのではないか。
提供:モーニングスター社
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