恐怖指数が30割れで波乱終息の兆し、大活躍した関連ファンドも落ち着き

 シカゴ・オプション取引所(CBOE)で取引されているVIX指数(ボラティリティ・インデックス)が先週末の5月8日に2カ月半ぶりに30を下回った。VIX指数は「恐怖指数」とも言われ、30を超える水準では株価の大幅下落の可能性が高いことを示唆し、リスク性資産への投資に警戒感が高まる。今回は2月25日の日中に30.25を記録して以来、VIX指数の上昇が目立ち始め、3月16日には終値ベースでは過去最高となる82.69を記録。同18日には2008年のリーマンショック時に記録した日中の最高値89.53に迫る85.47の高値を付けた。この間、株価は16日にNYダウが過去最大幅の下落(2997.10ドル安)を記録するなど大いに荒れた。

 VIX指数は、CBOEがS&P500指数のオプション取引の値動きをもとに算出・公表している指数で、一般的に、数値が高いほど、投資家が先行きに対して不安を感じているとされる。おおむね10−20の間で推移しているが、投資家の不安心理が高まると、突如として価格が跳ね上がり、30を超えて上昇する場面では株価が大きく下げる傾向にある。過去に遡ると、2018年12月のクリスマスショック(トランプ大統領のツイッターのツイートで米株が5%急落)、同年2月のVIXショック、2015年8月のチャイナショック、2010年−2011年のユーロ金融危機、そして、2008年のリーマンショックとなる。VIX指数が30を超える局面では世界の株式市場は大いに動揺した。

 今回、VIXがピークを付けた3月16日は、NYダウは12.93%、S&P500で11.98%の下落となった。その後、S&P500は3月23日終値2237.40を安値に値を戻し、5月8日には2929.80になった。今年の高値である2月19日の3386.15まで13.5%の上昇で届く位置だ。この株価の上昇の過程ではVIX指数は80台から、30割れの水準に低下している。

 国内の投資信託には、このVIX指数の動きを捉えた投資信託がある。楽天投信投資顧問が設定・運用する「楽天 ボラティリティ・ファンド(愛称:楽天ボルティ)」(資産成長型/毎月分配型)は、VIX先物を使って市場の平常時は実質的に売り持ちによってVIX先物の低下を収益獲得機会とし、市場の変動時にはVIX先物を買い持ちに切り替えてVIX指数の上場を収益機会にするアクティブファンドだ。

 また、三菱UFJ国際投信が設定・運用するETF「国際のETF VIX短期先物指数」<1552.T>がある。このETFは、期近の2限月のVIX先物価格を使用して、直近限月のVIX先物から翌限月のVIX先物に日次で同額ずつロールするポジションを複製するS&P500VIX短期先物指数に連動する運用を目指している。連動をめざす指数がCBOEのVIX指数とは異なるため、運用成果はVIX指数とは似て非なる成績になるが、今年3月のような変動時には基準価額が大きく上昇し、3月末基準では国際株式・北米(為替ヘッジ無し)カテゴリーで過去1年のトータルリターンがトップだった。

 「楽天ボルティ(資産成長型)」と「国際のETF VIX短期先物指数」、S&P500(配当込み、円ベース)の動きを重ねてみると、「楽天ボルティ」や同ETFが上昇する局面でS&P500が下落し、反対に「楽天ボルティ」や同ETFが下落する局面ではS&P500が上昇していることが確認できる。それぞれのファンドについては、各々の特性を活かして、大きな相場変動時のヘッジ手段としての活用ができそうだ。

 なお、「国際のETF VIX短期先物指数」は2017年9月15日に200口を1口にまとめる受益権の併合を実施している。2010年12月15日の設定時に1万3092円だった基準価額が100円割れにまで低下し、基準価額の1円の変化が資産価値の実際の変化よりも大きくなりすぎてしまったためだ。VIX先物指数は、平常の市場環境では価格が低下していく傾向が強い。同ETFは2017年9月15日に併合後1万5171円で取引が再開され、今年1−2月は5000円前後で取引されていた。一方、「楽天ボルティ」は、このVIX先物価格が平常時に低下していく性格を逆手にとって、売り立てによって収益化する方法を採用している。

 いずれにしてもVIX指数が30を下回ってきたのは、相場の波乱が収まる兆しとして注目される。VIX指数は、突然火を噴くように急に動き出すことがあるため、30を下回ったからといって安心できるものではない。このまま一段と水準を切り下げるかどうかを見守りたい。
提供:モーニングスター社
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