マーケットを予想しない―5ツ星ファンドマネジャーが解く分散投資の「極意」

 未曽有の危機となったコロナ・ショックを受けて分散投資の重要性が再認識されている。その考え方は日本株のアクティブファンドの運用においても共通だ。参考になるのが代表的な日本株ファンドの一つである「スパークス・新・国際優良日本株ファンド」(愛称:厳選投資)がこのほど発表した4月末基準の月次運用報告書。少数銘柄への厳選投資(4月末時点で18銘柄)を行いながら、「ビジネスの分散」と「地理的な分散」を意識した高度な分散を図っていることを投資家に改めて説明した。

 「ビジネスの分散」とは景気動向に左右されにくいビジネスと、景気感応度が高いビジネスに分散すること。「地理的な分散」とは銘柄の収益源をポートフォリオ全体として特定の地域に偏らず分散することを表す。こうした分散を心掛ける理由としては、「景気の方向性を事前に予測するのは難しく、それを基に株式市場の反応を予測するのは更に難しい」という基本認識があるからという。マーケットを予想するのではなく、徹底した個別銘柄の分析と長期保有の方がより有効との認識があるのだろう。

 同ファンドは4月末時点で「国内大型グロース」に属し、モーニングスターレーティングが5ツ星と、リスク調整後のリターンは優秀だ。組入銘柄上位の業種を見ると、開示されている上位5銘柄のうち業種で重複しているのは電気機器となる第1位の『キーエンス』と第3位の『ソニー』のみで、第2位の『テルモ』は精密機器、第4位の『シマノ』は輸送用機器、第5位の『花王』は化学と様々だ。『キーエンス』と『ソニー』についても前者はファクトリーオートメーション(工場の自動化)、後者はゲーム・映画などのエンターテイメント事業が収益源の一つと、ビジネスのタイプは大きく異なる。

 地域分散についても当ファンドのパフォーマンスが主要国・地域の株価指数と相対的に連動性が低いことから、分散されていることが分かる。過去10年間の運用成績に基づき、当ファンドと北米株、欧州株、中国株ファンドの値動きを表すモーニングスターインデックスとの相関係数(1に近いほど連動性が高い)を見たところ、それぞれ0.70、0.66、0.54となった。ちなみに同じ相関係数を国内大型グロース株ファンドの平均で算出したところ、それぞれ0.82、0.79、0.67と、当ファンドの方が連動性は低く、競合ファンドに比べて各国・地域の経済・市場動向に左右されにくいことが分かる。

 実際のところ、個人投資家がアクティブファンドの銘柄を見て景気感応度や収益源となる国・地域が分散されているかを判断するのは簡単ではない。そこで一つの手としては、異なる運用スタイルのアクティブファンドに分散することがある。ファンドの運用スタイルを簡易的にチェックする方法としては、モーニングスターカテゴリーを参照するのがよいだろう。

 例えば大型株は輸出関連株が多く海外動向に左右されやすいが、中小型株は主に国内市場を収益源とするため海外の影響を受けにくい。また、グロース(成長株)はバリュー(割安株)に比べて低成長局面でも収益を稼ぎやすいといった違いがある。同じ日本株ファンドでもこうした異なる特徴を有するファンドを組み合わせるのも一考だ。
提供:モーニングスター社
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