ヘルスケア関連株式ファンド、新型コロナ治療薬期待で好パフォーマンス、資金フローは低調

 新型コロナウイルスの治療薬やワクチンの開発期待を背景に、3−4月に世界の株式市場が乱高下する中でも、相対的に良好なパフォーマンスを上げたヘルスケア関連株式ファンドだが、足元で資金流出基調が強まっている。

 国内公募追加型株式投信(ETF除く)の中で、ファンド名に「ヘルス」「バイオ」「ゲノム」「メディカル」「医療」を含み、株式に投資するヘルスケア関連株式ファンドは37本あり、モーニングスターの大分類は全て国際株式に投資する「国際株式型」である。

 新型コロナウイルスの感染が拡大し、世界的株安に見舞われた3月のトータルリターンを見ると、ヘルスケア関連株式ファンドの平均が−6.76%となり、国内公募追加型株式投信全ファンド平均(モーニングスターインデックスに基づく)の−12.10%、国際株式型平均の−18.02%(同)を大きく上回った。ヘルスケア関連株式ファンドも全ファンドがマイナスのリターンとなったが、「ワールド・ゲノムテクノロジー・オープンAコース」が−2.49%となるなど、株式市場が急落する中でヘルスケア関連株式のディフェンシブ性が発揮された格好だ。

 続く4月も、ヘルスケア関連株式ファンドの平均が12.10%と、国内公募追加型株式投信全ファンド平均の5.08%、国際株式型平均の10.51%を上回った。欧米で新型コロナウイルス感染のピークアウト観測が広がり、株式が戻しを試す流れとなる中で、治療薬やワクチン開発動向が伝えられたことからヘルスケア関連株式が上昇。ヘルスケア関連株式ファンドは全ファンドがプラスのリターンとなり、中でも「グローバル全生物ゲノム株式ファンド(1年決算型)」が17.10%でリターントップとなった。

 また、20年4月末時点のヘルスケア関連株式ファンドの過去3年間のトータルリターン(年率)の平均(対象は25本)は7.03%となり、国際株式型平均の0.24%を大きく上回っている。ヘルスケア関連株式ファンドは、直近の株式市場の乱高下における短期的なパフォーマンスだけではなく、中長期的なパフォーマンスも良好である。

 一方、資金フローの動向は様相が異なる。ヘルスケア関連株式ファンドはテーマ関連ファンドの一角であり、直近では、18年6月−19年7月にかけて新規設定ファンドが人気化して資金が流入したものの、流入一巡後の19年8月に純資金流出に転じた後は流出超過が続いている。「グローバル全生物ゲノム株式ファンド(1年決算型)」は4月の67億円の流出超過に続き、5月も121億円の流出超過。ヘルスケア関連株式ファンド全体でも5月は180億円の流出超過となっており、国際株式型全体の584億円の流入超過と対照的な状況となっている。

 ヘルスケア関連株式ファンドは、新型コロナウイルスの感染拡大過程で治療薬やワクチンの開発期待から投資家の関心を集め、20年3月には流出超過額が24億円にまで縮小したが、その後は投資家の関心に一巡感が生じていると見られる。足元では、欧米で移動規制等が徐々に解除されるなど、世界各地で経済活動再開に向けた動きが進んでいる。企業業績や景気回復が意識され始め、これまで売り込まれた企業の株式への資金流入が強まることも考えられる。同時に、ヘルスケア関連株式ファンドに対する関心が後退し、資金流出基調が強まる可能性がある。
提供:モーニングスター社
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