「おおぶね」ファンドマネジャー異例の「自己資金投資」開示、米国では義務化

 農林中金バリューインベストメンツが運用する日本株ファンド「農中<パートナーズ>おおぶねJAPAN(日本選抜)」とグローバル株式ファンド「農中<パートナーズ>おおぶねG(長期厳選)」の月次運用報告書(4月末基準)がこのほど初めて公開された。注目されるのが、投資責任者(CIO)である奥野一成氏が各ファンドで保有する口数の推移が示されている点だ。

 ファンドマネジャーが自ら運用するファンドへの自己資金の投資を開示するのは日本では異例だ。自己資金の投資は受益者と利害を一致させるものであり、今回の開示はまさに投資家と「同じ船に乗る」姿勢を見せる意味があるのだろう。両ファンドで示されているのは口数を指数化したものなので実際の金額は分からないが、口数は毎営業日増加していることが分かる。ファンドは長期厳選という王道のアクティブ運用だが、自己資金の運用は積立の「コツコツ」投資家なのかもしれない。

 ちなみに米国籍の投信ではファンドマネジャーの自己資金の投資額を開示することが義務付けられている。追加情報(SAI)と呼ばれる資料で開示され、SEC(米証券取引委員会)の定めでは、自己資金の投資「無し」が最低、次いで「1ドル−1万ドル以下」などとレンジで示され、最高が「100万ドル超」と7段階で分けられる。

 例えば、米国最大の債券アクティブファンドで、日本でも公募投信で戦略が採用されるファンドが複数ある「ピムコ・インカム」の運用者3名は、CIOのダニエル・アイバシン氏が「100万ドル超」、ファンドマネジャーのアルフレッド・ムラタ氏が「10万ドル超−50万ドル以下」、ジョシュア・アンダーソンが「無し」だ。

 自己資金の投資額が大きいほど利害を一致させる度合いが強くなり、モーニングスターではプラスに評価している。ファンドのことを一番知っているのはファンドマネジャーのはずなので、その人物が自己資金を投資していることが、優れたファンドであることのメッセージだとみることもできる。

 自己資金の開示は進んでいる米国だが、実際にファンドマネジャーが積極的に資金を投じているかは話が別になる。4月末時点で米国籍投信7467本を対象に「100万ドル超」の自己資金を投じるファンドマネジャーがいるファンドを集計したところ、1168本と全体の2割以下にとどまった。それだけ「100万ドル超」に該当するファンドは希少価値が高いことになる。

 15年に行われた米モーニングスターの調査では、ファンドマネジャーの自己資金投資額が大きいファンドほど、5年のリターンがカテゴリー平均を上回る確率が高かったという結果も出ており、自己資金の投資額は将来のパフォーマンスを予想する上で参考になるとされる。日本でも「おおぶね」の今回の取り組みがファンドマネジャーの情報開示の新たな動きにつながるか注目される。
提供:モーニングスター社
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