「3低時代」の株式運用にTOPIXは不都合?より良い銘柄に選別投資する方が好成績

 今どきの男子が結婚に求められる条件は「3低」(低姿勢、低依存、低リスク)らしいが、世界の証券市場も「3低」(低金利、低成長、低インフレ)になっている。コロナ禍で世界の中央銀行が一斉に低金利政策をとったものの、依然として有効なワクチンが出回らない中にあって世界の経済成長率は高まらず、インフレ率も低く抑え込まれ、結果として低金利時代が継続する見通しが強い。その中にあって、企業の優勝劣敗が明確となってきた。その変化は、国内株式市場ではTOPIX(東証株価指数)のトータルリターンを日経平均株価が上回り、さらに、銘柄に選別投資するアクティブファンド「ひふみプラス」の方が高いことに表れている。国内では機関投資家を中心にTOPIXのインデックス運用が選好される傾向が強いが、「3低時代」のパフォーマンスは、広く全体をカバーするより、より良い銘柄を選んで投資する方に優位に働きそうだ。

 TOPIXは、東証1部上場全銘柄(2172銘柄)の時価総額を指数化したもので、浮動株時価総額加重型によって算出している。時価総額が大きく浮動株比率の高い銘柄の影響を受けやすく、銀行、不動産、建設、電力など内需関連株の影響が大きいという特徴がある。一方、日経平均株価は225銘柄の平均株価の指数で、値がさ株(価格が高い株式)が多い電気機器、情報通信など輸出関連株の影響が強く出る傾向がある。日経平均株価に採用されている225社は、(1)市場の流動性が高い(2)セクター間のバランス、(3)臨時の入れ替えでは企業の実態を考慮する――を条件に絞り込まれているが、採用される企業は「日本を代表する企業」に相応しい企業といえる。業績が低迷し、市場での売買が不活発な不人気銘柄は日経平均株価に残れないことになる。

 一方、「ひふみプラス」は、国内株式を主要な投資対象としたアクティブファンドだ。投資銘柄数は2020年8月末現在で258銘柄と日経平均株価をやや上回っているが、こちらは、より良い銘柄を厳選した結果のポートフォリオになっている。

 このTOPIXと日経平均株価、そして、「ひふみプラス」のトータルリターンを相対比較すると、過去1年間では「ひふみプラス」が22.40%、日経平均株価が11.76%、TOPIXが7.03%となり、アクティブファンドの「ひふみプラス」の優位性が目立つ。過去5年間でみると、「ひふみプラス」が10.51%、日経平均株価が4.14%、TOPIXは1.03%になる。「ひふみプラス」が年率2ケタで成長する中、TOPIXはほぼ横ばいだった。この間の国内GDP(国内総生産)成長率が年平均0.88%なので、TOPIXのトータルリターンは経済実態を良く表しているともいえるが、投資指標として考えた場合は、TOPIXは物足りない結果ではないだろうか。

 ただ、国内では投資指標としての活用にはTOPIX優位が続いている。たとえば、代表的な国内ETF8本(TOPIX型と日経平均株価型が各4本)の純資産総額は、TOPIX型は合計約25.5兆円、日経平均株価型は約14兆円で2倍ほどの開きがある。日経平均株価をTOPIXで割ったNT倍率は、1970年−2000年には11−15倍だったが、ITバブル崩壊後の2000年代初頭から2009年頃までは10倍前後に低下していた。その後、アベノミクスによる株高局面でぐんぐん上昇し、現在は14.3倍程度に高まってきている。すなわち、過去を振り返ると、日本のバブル崩壊からリーマンショックまでのTOPIX優位に対して、リーマンショック以降の10年間は日経平均株価優位の時代が続いてきたことになるが、運用の世界でのTOPIX優位は揺るがない。

 リーマンショック後、日本は低金利、低成長、低インフレの「3低時代」になっている。その中にあって、東証1部全銘柄を対象としたTOPIXより、銘柄を絞り込んだ日経平均株価やアクティブファンドのパフォーマンスが優れていたことは事実だ。この「3低時代」が当面は続くと見込まれる中でパフォーマンスが期待しにくいTOPIXに投資し続けることは再考したい。たとえば、毎月1万円を積み立てて5年間を経過したとして、TOPIXを使っていた場合は、投資元本60万円に対し約61.5万円(税金と運用手数料を考慮せず、年平均リターンで年複利)にしかならない。これが、日経平均株価で積み立てた場合は66.6万円、「ひふみプラス」を使って積み立てた場合は78.25万円だ。日本株に投資するという同じようなリスクを取った結果としての差は大きいのではないだろうか。
提供:モーニングスター社
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