家計金融資産残高が1946兆円とピーク更新、投信は残高最高だが比率は依然4%台

 日本銀行が6月25日に発表した資金循環統計(速報)(2021年第1四半期)によると、21年3月末の家計の金融資産残高の合計は1945兆7887億円となり、過去最高を更新した。また、そこに占める投資信託(投信)も83兆9826億円と過去最高を更新した。20年3月末と比較すると、家計の金融資産全体の伸び率は7.14%だったが、投信は33.92%、株式等は32.06%と非常に高い伸び率になった。金融資産に占める投信の割合は4.32%で、各年3月末の比率としてはピークである15年3月末の4.62%に次ぐ高い比率となり、今後の成長が期待される。

 家計の金融資産に占める投信の比率は、2000年3月末以降、各年3月末でみると、03年3月末に1.98%でボトムを付け、その後は徐々に比率を上げて15年3月末に4.62%で直近のピークを付ける。その後は4%程度で安定的に推移していたが、20年3月末はコロナショックによる株価の下落で3.45%にまで落ち込んだ。21年3月末は、世界的な株価の上昇や、資産運用ニーズの高まりなどによって、大幅に投信残高が伸びた。

 家計に占める投信の残高は、2000年3月末の31兆9171億円から、基本的に右肩上がりで徐々に拡大している。06年3月末には53兆8302億円と50兆円の大台に乗せた。09年3月末にはリーマンショックの影響等で一時的に50兆円の大台を割ったが、15年3月末には80兆9338億円と80兆円台の大台に乗せている。21年3月末は15年3月末以来の80兆円台乗せになる。

 一方、21年3月末時点でも家計の金融資産の54.26%を占める現金・預金は、近年は再び存在感を強めている。2000年3月末以降でみると07年3月末に48.01%まで比率を下げる場面もあったが、08年3月末以降は50%超の状態を継続し、20年3月末に55.09%と直近のピークをつけている。

 国内のゼロ金利政策が長期化し、「貯蓄から資産形成へ」をめざす家計金融資産の効率化については、14年1月のNISA(少額投資非課税制度)のスタート、17年1月のiDeCo(個人型確定拠出年金)の加入対象者の大幅拡充、18年1月のつみたてNISAのスタートなど、ことあるごとに強調されてきた。しかし、NISA以降は、預貯金から株式や投信に資産を移すと投資収益非課税などの特典を付与しているにもかかわらず、現金・預金比率は13年3月末の52.76%から、ほとんど動いていない。むしろ、19年3月末53.03%、20年3月末55.09%、21年3月末54.26%と近年は現金・預金比率が高まる傾向すらある。その結果、21年3月末の現金・預金残高は1055兆7809億円にまで拡大した。

 株式等と比較すると、投信は、国内資産だけでなく、海外にも投資が可能であり、債券のような確定利付き商品や不動産、貴金属など様々な投資商品に投資することができる。また、換金のために海外資産に投資している場合は最大1週間程度の換金手続き期間を要するとはいえ、換金ができないという不安はない。このため、現金・預金からの資金シフト先としては、投信が有力な金融商品と目されている。その投信残高は、過去最高残高を超えて拡大に拍車がかかる勢いがついてきた。今後の成長を見守りたい。
提供:モーニングスター社
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