金融庁が「ESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会」を設置、ESG投資の普及を後押し

 金融庁は2月3日、「ESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会」を設置すると公表し、2月7日に第1回の会合を開催することを発表した。同専門分科会の座長は青山学院大学名誉教授・東京都立大学特任教授の北川哲雄氏が務め、野村證券金融工学研究センター長の太田洋子氏、三井住友銀行経営企画部上席推進役の島健治氏、りそなアセットマネジメントの執行役員責任投資部長の松原稔氏、ニッセイアセットマネジメントのチーフ・アナリストの林寿和氏らがメンバーになっている。経済産業省と環境省がオブザーバーとなり、金融庁総合政策局総合政策課が事務局を務める。

 この専門分科会は、2021年6月に金融庁が公表した「サステナブルファイナンス有識者会議報告書」において、ESG投資が拡大する中で重要性が増すESG評価・データ提供機関について、期待される行動規範のあり方等の議論を進めていくべきだと提言されたことを受けて設置されたもの。

 有識者会議報告書では、「ESG評価・データ提供機関」について、「ESG評価とデータの重要度が増す中、評価とデータ提供を行う機関に対し、評価される企業側やデータを利用する投資家・金融機関側より、いくつか課題も指摘されている」として、以下の4つの課題を具体的に示した。

 (1)ESG評価・データ提供機関によって、評価やデータ補完の基準・手法が異なっている中、その詳細や設定の意図等が開示されていなければ、それぞれの評価結果が異なる理由が分からないなど、評価の透明性と公平性に課題がある。

 (2)評価基準等について客観的な基準が非公開な中、企業評価やグリーンボンド等の外部評価を行う一方で、同じ企業に対して有償でコンサルティングサービスを提供するなど、利益相反が懸念されるケースがあるなどガバナンスと中立性に課題がある。

 (3)要求されるべき評価能力、適正な人員、ガバナンス態勢等が客観的に担保されていないなど人材の登用に課題がある。

 (4)多くの評価機関から評価内容等の確認を求められることの事務負担の大きさなど企業視点での課題がある。

 一方、有識者会議報告書では、個人に対するESG関連の投資機会の提供について、国内において「ESGファンド」への資金流入が活発化していることを評価しつつも、「どのような基準に基づき『ESG』や『SDGs』という名称を付すかについては、現在各社の裁量に委ねられており、ESG関連投資信託の銘柄選定基準は、個々の運用会社や商品によって異なっている」と指摘。「顧客保護の観点から、ESG関連投資信託の組成や販売に当たって、投資銘柄の選定基準も含めて丁寧に説明を行うとともに、その後の選定銘柄の状況についても可能な限り具体的な指標を用いて、継続的に説明することが必要となる」としている。

 また、「とりわけ、投資信託に『ESG』や『SDGs』等の名称をつける場合には、顧客がその名称の趣旨を誤認することのないよう、その商品が当該名称の示唆する特性をどのように満たしているかを、可能な限り指標等も用いて明確に説明すべきである」と求めた。さらに、環境的・社会的インパクトの創出を当該商品の重要な特性とするインパクト投資商品については、「期待されるインパクトとその達成状況も、可能な限り具体的な指標を用いて説明することが必要となる。とりわけ、『インパクト投資』等の名称を付ける場合には、当該インパクトをどのように実現していくかを、可能な限り指標等も用いて明確に説明すべきである」と注文している。

 ESG投資の拡大・普及のためには、有識者会議報告書が指摘した「ESG」や「SDGs」などについての名称をつけるにあたっての統一的な基準なども必要となってこよう。「インパクト投資」については、運用会社によっては厳格な基準を公表した上で丁寧な報告書を発行している例もある。より健全な発展を図る上で、運用会社や投信を販売する金融機関等の積極的な情報開示姿勢が求められている。
提供:モーニングスター社
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