投資信託の残高が家計に占める比率が過去最高、投信積立は株安でも定着するか?

 日銀が3月17日に発表した2021年10−12月期の資金循環統計(速報)によると、12月末時点の家計の金融資産残高が前年比4.5%増の2023兆円となり、初めて2000兆円の大台に乗せた。資産別残高の前年比は、現金・預金が3.32%増、株式等が15.50%増、投資信託が20.40%増となり、投資信託の伸び率の高さが際立っている。投資信託の伸び率は、21年3月末から4四半期連続で前年比20%を超える高い伸び率になっており、個人金融資産に占める投資信託の残高比率も4.66%と過去最高水準に高まっている。

 投資信託や株式等の残高の伸び率が高いのは、2020年3月が「コロナ・ショック」によって大幅に株価が落ち込んだ反動で高く出ている部分もある。21年3月末には株式等の残高は前年比42.63%の大幅な伸びとなり、6月末29.83%、9月末が28.14%という大きな伸び率を続けている。この株高の影響は、投資信託の残高増に直結し、21年3月末が33.93%増と大きく跳ね上がった後、6月末が28.25%増、9月末が23.85%増と株式等に負けない伸び率を続けてきた。

 ただ、株式等の残高は20年に4四半期連続でマイナスの伸び率だったが、投資信託は9月末が2.50%増、12月末が5.94%増と第3四半期末からプラスに転じていた。それでも21年12月末実績で、投資信託が株式等を上回る残高の伸びになったのは、投資信託に対しては株式等と比較して非常に強い需要があることを示していると考えられる。

 もっとも投資信託の残高は12月末現在で94.30兆円と株式等211.57兆円の44.57%の水準に過ぎない。個人金融資産に占める投資信託の比率も5%に届かず、株式等が10%台に乗せていることと比較して存在感が小さい。4.66%という比率は、年末ベースでは2007年末の4.657%を超えて過去最高になった。投資信託の残高比率は2000年末には2.39%という比率でしかなかったので、そこから20年間で約2倍に成長したことになる。この成長ペースをみると投資信託の残高の伸びる余地は非常に大きいと考えられる。

 このように家計の金融資産に占める投資信託の存在感が高まってきた理由は、日本証券業協会が3年ごとに調査している「証券投資に関する全国調査」の結果からも見て取れる。21年12月に発表された2021年6月〜7月時点の調査結果では、投資信託の年代別保有比率は、25〜29歳男性(女性)の7.3%(4.7%)、30〜34歳男性(女性)の10.6%(7.5%)、35〜39歳男性(女性)の12.8%(7.2%)と、2018年6月〜7月調査に比べて若者層の増大を予感させた。18年調査では、25〜29歳男性(女性)は5.0%(2.5%)、30〜34歳男性(女性)は6.6%(5.9%)、35〜39歳男性(女性)が7.5%(2.7%)だった。過去3年間で男女ともに投資信託保有者の比率が高まっている。

 この若年層への投資信託の普及を後押ししているのが、毎月100円〜1000円程度から手軽に始められる投資信託の積立投資の普及にあると考えられる。ネット専業証券など多くの証券会社では、スマホを使って口座開設から、積立て開始に至るまでの一連の手続きが完結できるようになり、銀行等にもその動きが広がっている。夜間でも休日でも簡単に購入手続きができて、しかも、1000円程度の資金でも投資がスタートできる手軽さが、投資信託の利用を促してきた。さらに、21年12月までは世界的な株高が継続し、投資信託を購入すれば年率2ケタの利回りを狙うことも難しくない市場環境だった。

 2022年になって投資環境は一転し、株式市場は年初をピークにした下落局面になった。積立投資を継続していれば、株価等の下落は資産を積み増すチャンスになるのだが、経験が少ない個人投資家がこの下落局面を前向きにとらえることはできるだろうか? 今後の日本の個人金融資産の進展を見極める上でも非常に興味深い局面を迎えている。よく比較されるように、欧米では個人金融資産に占める投資信託の比率は10%前後になっている(米国が13,2%、ユーロ圏は9.6%:2021年3月末現在)。日本の比率の2倍を超える水準だ。過去20年間で個人金融資産に占める投資信託の残高比率は2倍に高まった。これからの投資信託の普及スピードはどうなっていくのか、今後の推移を見守りたい。
提供:モーニングスター社
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