10年リターンが同じアクティブファンド、リスク水準の違いで継続保有が困難になることも

 アクティブファンドの選定・保有に際してはリターンに目が向かいがちであるが、リスク(標準偏差、リターンのブレ)もしっかりと見ておきたい。アクティブファンドは、独自の視点からの銘柄選択によって市場平均を上回るリターンを目指すため、リスクが大きくなることもある。高リスクであってもそれに見合ったリターンを獲得できれば良いとの見方もあるが、ハイリスクは必ずしもハイリターンを保証しない。米長期金利の上昇、米金融引締めへの警戒感、中国の景気減速懸念などを背景に世界の金融市場が揺れている今は、リスクを再認識する良い機会である。

 日本を除く先進国株式に投資するモーニングスターカテゴリー「国際株式・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし)」に属するファンド(確定拠出年金専用、ファンドラップ専用、ETF除く、通貨選択型も除く)の中から、2022年3月末時点の過去10年間のトータルリターンがほぼ同じ2本のファンドを選び出し、直近10年間のパフォーマンスの推移を調べた。結果的に10年間のリターンが同じであっても、各々がどのような推移を辿ったのか確認するのが目的である。

 対象としたのはともに10年リターン(年率)が14.15%のAファンドとBファンド。10年間のリスク(年率)は、Aファンドが17.82%、Bファンドが19.90%と約2ポイントの差がある。

 10年前の2012年3月末時点を10000として指数化すると、Bファンドに比べてリスクの小さなAファンドは一貫してカテゴリー平均を上回った。コロナショック時の2020年3月の頃にはほぼカテゴリー平均並みとなったもの、それ以外はカテゴリー平均を常に一定幅上回って安定的に推移した。一方、Bファンドは、2018年後半から2019年半ばにかけて度々カテゴリー平均を下回った。他のファンドとパフォーマンスを見比べて継続保有を断念する投資家もあっただろう。コロナショック後には大幅に上昇したものの、2021年末からは乱高下気味となっている。直近10年間の世界的な株高基調を背景に両ファンドともに概ね右肩上がりのパフォーマンスとなったが、途中経過には違いが見られる。

 両ファンドは、結果的に直近10年間は同じリターンとなったが、10年後のリターンが同じになる保証はない。ただ、Aファンドについては、今後も、カテゴリー平均を安定的に上回るリターンの獲得期待が高まる。一方、Bファンドについては、カテゴリー平均を大幅に上回ることも、再び下回ることも想定され、カテゴリー平均を大幅に劣後し回復までに時間を要することも想定される。

 高リスクであろうとも、運用哲学・プロセスを評価し許容し、高パフォーマンスを期待するというのもアクティブ投資の一側面ではある。とはいえ、高リスクファンドには大幅下落に見舞われる可能性もある。アクティブファンドの選択においては、運用哲学・プロセスの吟味は勿論だが、パフォーマンス押し下げ要因となるコスト水準や、安定的な運用の可能性に繋がるリスク水準についても考慮したい。
提供:モーニングスター社
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